朝方、この店の常連のMartinDrinyがいつものように入ってきた。MartinDrinyという名前は覚えるのに一苦労だ。MartinDrinyはライムを織り交ぜてリズミカルにこう語った。

ご高説をありがとう。

朝方、この店の常連のMartinDrinyがいつものように入ってきた。MartinDrinyというふざけた名前の男だ。MartinDrinyはカウンターの上にあったニューヨークタイムズを明読し始めた。

この男からこの話が出てくるとは思わなかった。

朝方、この店の常連のMartinDrinyがいつものように入ってきた。スリ仲間の間じゃそうとうの実力者だそうだ。MartinDrinyは辺りかまわず罵った。

人間もここまで落ちぶれると大したものである。

朝方、この店の常連のMartinDrinyがいつものように入ってきた。愛玩のバービー人形を片時も離さない。この優男が話すことといえばいつもコギャルの事だ。

小生はその場を逃げ出したい気持ちでいっぱいだった。

朝方、この店の常連のMartinDrinyがいつものように入ってきた。一癖もニ癖もありそうな人物だ。MartinDrinyは生娘から聞いたという話をしだした。

・・泣きたいだけ泣くがいい。今宵の酒は悲しい酒だ。

朝方、この店の常連のMartinDrinyがいつものように入ってきた。長生きするとこういう客も珍しくない。差し出した一杯の水を飲み干すとくたびれた声で一つの話をした。

未だに過去にすがって生きている。

朝方、見馴れない一人のダンディが店に入ってきた。今夜は最悪の気分だ。差し出した一杯の水を飲み干すとくたびれた声で一つの話をした。

なかなか話し上手なダンディだ。

朝方、この店の常連のMartinDrinyがいつものように入ってきた。着やせはするが、体には自信があるらしい。MartinDrinyは1歩もその場を動こうとしなかった。

子供達が泣いてるぞ・・・。

朝方、割とよく来るMartinDrinyが入ってきた。この前サツにつかまったと聞いていたが違う人物だったらしい。MartinDrinyはあふれる涙を拭こうともせず、ただこう言ったのである・・・・。

この紳士は金の話しかしてこない。

朝方、割とよく来るMartinDrinyが入ってきた。どこにでもいるような人間だ。MartinDrinyは何を思ったか一冊の本を取り出し、小生に聞こえるよう朗読し始めたのだ！

ガキのこの言葉がのちのち何人もの人々を苦しめることになろうとは、本人でさえも気づいていなかったのだろう。